雷鳴の夜
地下病棟は思った以上に広かった。

私が勤務している病院の地下に、これほどの広い空間が存在していたとは驚きだ。

廊下は角を曲がり、更に奥へと続いている。

「これだけ広くて暗いと、何かが潜んでいても不思議じゃねえ…」

ヴィクターがそう言って私の顔を見た。

「あんた、そう思わねぇか?」

「……」

私はプイとそっぽを向く。

この人は私をからかって遊んでいる節がある。

いちいち相手にはしていられない。

早くこの地下病棟から出ないと、今頃は私がいない事に気づいて大騒ぎになっている筈だ。

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