雷鳴の夜
それに。

私はこの地下病棟に入った直後に発見した、外来受付の血痕の事を思い出していた。

ここで何らかの怪我をした人がいる事は事実だ。

あの出血量からすると、確実に命に関わる。

事故なのか、殺人なのか、それはわからない。

犯人がまだここにいるのか、犠牲者がどこかにいるのか。

それもわからない。

もしかしたら犠牲者は例の三池総一郎で、犯人は…。

「……」

背後を歩くヴィクターに気取られないように視線を向ける。

このヴィクターという男は油断ならない。

決して信用してはいけない男だった。

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