雷鳴の夜

「まぁビビるのも無理はねぇ。あんな得体の知れねぇ叫び声のする場所だ。ましてやあんたは女の身、恐れをなしてベソかいてチビっちまうのも致し方ねぇって奴だ」

見下したような目で私を見るヴィクター。

その視線に憤る。

この男はどこまで性悪なんだろう。

私が脅え、恐怖している姿がそんなに愉快なんだろうか。

「…別に恐れてなんていません」

毅然と。

湧き上がってくる畏怖の感情を押し込め、私は答える。

「あんな咆哮が何ですか。野良犬でも入り込んでるだけですよ。私、犬は好きですから」

「犬ねぇ…」

ニヤニヤと笑うヴィクター。

その笑みが癇に障る。

「何ですか！？」

私が凄い剣幕で突っかかると。

「いやいや、結構結構」

ヴィクターは頷いた。

「じゃあ先を急ごうぜ」