雷鳴の夜
そんな緊迫した空気のまま、私達はゆっくりと廊下を進む。

聞こえるのは私達の足音だけ。

しかしやがて、その足音に混じって。

「……?」

奇妙な音が聞こえた。

何かが砕けるような音。

乾いた音を立てて、固い何かが粉砕されるような音。

…最初は見当もつかなかった。

初めて耳にする音なのに、聞き覚えのあるようで…。

記憶の糸を辿っていくうちに、私達はまた部屋の入り口に到着する。

『霊安室』

亡くなった患者さんを安置する、病院内で最も神聖且つ忌まわしい場所。

…音は、そこから聞こえてきていた。

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