雷鳴の夜
途端に、目の前を歩くヴィクターの殺意が膨れ上がる。

「…っっ…!」

私は体の震えが止まらない。

何をしようとしているの?

ヴィクターは、誰に対してそれほどの殺意を剥き出しにしているの?

ねぇヴィクター。

『その部屋に誰かいるの?』

呼吸さえまともに出来ない緊張感の中、部屋の入り口の前に立っていたヴィクターが、室内に一歩踏み入れた。

…同時に、固いものを砕くような音が止む。

霊安室にいた『何か』が、ヴィクターの侵入に気づいて音を立てるのを止めた。

そう考えるのが自然だった。

< 75 / 150 >

この作品をシェア

pagetop