雷鳴の夜
階段を下り、扉に近づく。

…扉には僅かな隙間。

その隙間から、冷気が入り込んでくる。

空調の効いた院内の温度とは明らかに違う、冷え切った空気。

その冷たさが温度によるものなのか、言い知れぬ恐怖から来る悪寒なのか。

私には判断が付かない。

判断が付かないまま。

「……」

私は扉に手をかける。

重い扉。

だけど、私の力でも開かない事はない。

扉を押すと、ゆっくりとその隙間が広がっていく。

開く。

長年誰も開けた事のなかった開かずの扉が、今…!

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