雷鳴の夜
第五章
時折目眩にも似た不安定な揺らぎを見せながら、大男は私達に迫ってくる。

ずぢゃり…という湿った肉の足音。

あくまで緩慢な、しかし力感を伴うその歩調に、否応なく恐怖を掻き立てられる。

大男から感じられるのは、殺意。

ヴィクターのような刺々しい殺意ではなく、まるで昆虫が獲物を捕食するかのような、無機質な殺意だった。

一歩一歩、私達を追い詰めるように近づいてくる大男。

私はジリジリと下がるしかない。

だって…こんな怪物、どうしろっていうの!?

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