tears
“ちゃんと好き”
私はいまいち好きという感情が分からない。今までの恋愛も、“好き”というより、“好きなつもり”の方が正しいのかもしれない。
「ちゃんと好きだったね~」
ナナが脚をバタバタさせながら、繰り返した。
「いつかは、好きすぎて泣いちゃう。
とか、辛くて泣ける恋がしてみたいなあ…」
私もナナと同じように脚をバタバタさせて空を見上げた。
空はいつの間にか暮れていて、オレンジ色になっていた。
「梨奈には一生無理だと思う」
ナナが私の方を見て言った。
「なんで?分かんないじゃん」
私は口を尖らせながら言う。
「そういうのは体質なんだって、きっと!!」
「体質か~、泣ける恋してみたいんだけどなあ…
ナナはあるの?泣いたこと」
ナナは動きを止めた。