tears

“ちゃんと好き”
私はいまいち好きという感情が分からない。今までの恋愛も、“好き”というより、“好きなつもり”の方が正しいのかもしれない。

「ちゃんと好きだったね~」


ナナが脚をバタバタさせながら、繰り返した。


「いつかは、好きすぎて泣いちゃう。
とか、辛くて泣ける恋がしてみたいなあ…」


私もナナと同じように脚をバタバタさせて空を見上げた。
空はいつの間にか暮れていて、オレンジ色になっていた。


「梨奈には一生無理だと思う」


ナナが私の方を見て言った。


「なんで?分かんないじゃん」


私は口を尖らせながら言う。


「そういうのは体質なんだって、きっと!!」


「体質か~、泣ける恋してみたいんだけどなあ…
ナナはあるの?泣いたこと」


ナナは動きを止めた。




< 6 / 18 >

この作品をシェア

pagetop