ぼくの 妹 姫
蕾は振り返ることなく
部屋を出て行った
ぼくと蕾が
また逢うことは
たぶん一生ないだろう
一人残された
暗い部屋で
ベッドに座り
うなだれた
この頬に、胸に、腕に
蕾のぬくもりが残ってる
朝が来るまで
こうして
蕾のぬくもりを
消えないように
身体に刻み
ぼくは帰るだろう
飛行機に乗り
電車に乗り
バスに乗り
あの海沿いの田舎町に
そして
柔らかく ぼくを締め付ける
窒息しそうな『幸せ』と
今度こそ向き合い
守って暮らすだろう
どこにも逃げ出さずに