ぼくの 妹 姫
楓
そう呼ぶ母の声が
耳の奥に残って
後悔なんて しない
後悔なんて しない
ぼくは蕾を守りたかった
これ以上、蕾を傷つけるなら
許せなかった
殺さなきゃ
ぼく と 蕾に
未来なんて なかった
…ピリリリリリ
…ピリリリリリ
頭を抱えた ぼくの膝の上で
ケータイが鳴る
表示を見ると
〔着信 美紗(ミサ)〕
………美紗かぁ
相変わらずだな
こんな夜中に
ケータイを開き通話ボタンを押す
「………はい」
「楓?」
耳に相変わらず 鼻にかかった
甘ったるい声が流れこみ
今夜は少し救われた気持ちになった
「なんの用だよ、美紗」
「冷たくない?
楓が 寂しいんじゃないかって
心配してかけたのに」
嘘つけ こんな夜中に
ただ暇だっただけだろう?