危険な二人
何のために生きているのかわからない。

このまま死ぬのが悔しい。

今の俺にはそれだけの理由しかない。

これは、生きる理由というよりは死ぬ前の清算に近い心境だろう。

まだ死ねない。
そんな、死ぬ事が前提にあるような後ろ向きな生き方しか、俺には出来なかった。

とりあえず、今日を生きなければならない。

いつか、花島には目にもの見せてやる。
という熱い思いはあるが、いかんせん空腹が堪える。

どうやって今日のメシにありつこうか。

コンビニの廃棄食材など、比較的クリーンな食い物を探すとなると難しい。
既に先客がいて、新参者が入り込むと酷い目にあうのだ。

こないだも、新入りがコンビニ弁当を断りもなくさらっていったと、ホームレスのネットワークで知れ渡っていた。

こうなるとこの新入りは貢物を持って謝りに行くか、違う場所へ移動するしかない。

家も金もなくても、ホームレスも一つの社会なのだ。

安定した食い扶持を確保できない俺のような新入りは、先輩ホームレスに弟子入り(イメージだ)して、分け前を貰うか、独自のルートを開拓するしかない。

下手に漁場を荒らすと、誇張なしで袋叩きにあうのだ。

あっちの世界にいたころは、ホームレスはのんびりした暮らしだと思っていたが、こうも殺伐とした世界だったとは。

俺のいる場所が特別で、よそはそんなことはないのかもしれないが。

人付き合いが苦手な俺は、独自ルートはおろか、弟子入りすら出来ない。

となると安い食い物でなんとかするか、後は食わずに耐えるだけだ。

今までは、親切な人から食い物をもらえたりもしたのだが、そういうものは基本的に当てに出来ない。

空腹も極まった断食八日目。もともと栄養状態がよくないものだから、いくらも我慢がきかない。

俺はもう、本当に限界だった。
< 3 / 9 >

この作品をシェア

pagetop