危険な二人
苦しい時の神頼みとは言ったもので、困難な状況にあるほど人は救いを求める。

俺もそうだった。

もうにっちもさっちもいかない、こんな状況にこそ救いの手が差し伸べられるのではないか、そういう期待が出てくるのだ。

もちろんそれが現実になることはない。そんなことは分かっているのだ。

越えてはいけない一線を、越えたくない一線を、誰かが救ってくれたら踏みとどまれる。

そんな気がしたのだ。

そう、気がしただけだとも。

結局俺は老婆から財布をかっぱらって逃げたんだ。

ほとぼりが冷めるまで近寄るまいと決心し、俺は西へ東へとねぐらを変えた。

奪った財布には三万円入っていたから、これであと三年は闘えると思ったものだ。
< 4 / 9 >

この作品をシェア

pagetop