危険な二人
実際には、三年ともたずに古巣へと帰ってきた。

金というのはあればあるだけ使ってしまうもので、数ヶ月で福沢諭吉は一人もいなくなった。

夏目の野郎が俺から離れていくのは、もっと早かった。


結局、浮浪者になってから都合一年だろうか。

髪は伸びっぱなし、ひげも伸びっぱなし、着の身着のままでずっと身につけていたワイシャツは、とうに襟がボロボロだ。

どこからどう見ても浮浪者。

それ以上でも、それ以下でも、その中間ですらない。

このまま生きていても再起の目はない。

俺は、ひたすら命を繋ぐだけの日々で一つの目標のようなものを持った。

同じ苦しみを、同じではなくとも苦しみを、誰かに与えてやろう。

そう考えたのだ。


いつか金が尽きた日のために、懐が温かいうちに買っておいたものがある。

白地に青の縦縞のワイシャツ。

スラックス。

ひげそり。

そして石鹸だ。

身なりを整えて、バカな奴を騙して金を巻き上げてやる。

俺は、そんなつまらないことを考えて今日まで生きてきたのだった。
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