道標



  弐

 僕は四畳半一間の部屋の中で荷物を整理していた。
 小さなテレビと、小さなテーブルが備え付けられたその部屋の中で、僕の私物はほんの少し。
 小さなボストンバックの中に全てが収まってしまう。でも、一人旅にはそれが一番良い。
 バックを左肩に掛け、僕は部屋を出る。
 最後に静かにドアを閉め、僕は三ヶ月を共に過ごしてきた、その古びた部屋に別れを告げた。
 軋む階段を降り、外へと向かう。
 僕はバックを掛け直す。そして外へ出る。
 昼を少し過ぎたばかりの太陽の光が暖かい。
 僕は振り返る。
 大きく息を吐く。白い息がすっと消えていく。
 前を向き、僕は太陽を見上げる。
 この地を離れる前にやるべき僕の本当の仕事。
 その仕事をする為に僕は歩き出す。


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