道標
 電車は速度を落とす。
 道路をくぐり抜けると、駅はもう目の前。
 女の子は駅に人がいるかどうかを確認しようと、シートの上に両膝を乗せ、電車の窓を開け、その隙間から顔を出す。
 少し早めの田舎の空気。そして電車が止まりドアが開く。
 この駅には駅員が一人。
 でも客はいない。
「お兄さんって十六歳なんだよね?高校には行ってないの?」
 女の子は窓を閉め、先程と同じようにシートに腰掛ける。
「そう。行ってないよ。中学を出てすぐに旅に出たからね」
 学校と言う場所は僕にとっては忙しすぎる。
 ドアが閉まり電車は走り出す。
 今、電車の中には僕と女の子の二人だけ。


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