ホスト 神
部屋のドアを叩きつけるように閉めた俺は、その場で崩れるようにしゃがみ込んだ。



…そんな笑顔見せんなよ…今はあの由美の笑顔が、俺の心を締め付ける。



コンコン。



「神。どうしたのぉ?なんかあったのぉ〜?」



…俺は疲れたから寝ると、一言だけ由美に告げた。



…切れない包丁で無理矢理切り刻まれるように、体の中心が痛む…。



由美の顔を見てから、俺の中で何かがおかしくなった。



…今は由美の顔を見たくない…。



なんなんだよこの感情は!由美の事なんてなんとも思って無いぞ!



…そうだ…何とも思ってない。



そう思うと体がスーっと軽くなり、俺はスーツを脱ぎ捨て布団に入った。



……心の中で羊を数えるように、由美の事はなんとも思ってないと繰り返しながら…。
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