ホスト 神
こんな暗い顔をしている美月さんを見たら、もう派閥を作るのを面倒くさいなんて言ってられないな…。



ジュンも、美月さんのこんな顔を見たくは無いだろう。



「分かりました。俺とジュンで派閥を作ってみます。でも、上手くいくかは分からないですよ。」



次の瞬間、車に乗ってから初めて美月さんの笑顔を見た。



この太陽の光さえも、跳ね返してしまうような眩しい笑顔だった。



「有り難う神君!…実はね、新しく入った慎悟君居るでしょ?あの子はハルが見つけてきたのよ。神君達が派閥を作りやすいように、わざわざ神君達を慕ってくれている子だけを探してね。お店の営業が終わった後、睡眠時間を削ってキャッチしていたのよ。俺にはこんな事しか出来ないから…ですって。」



俺は[fly]が好きだ。だから今でも[fly]で働いている。



最近はこういう何気ない美月さんやハルさんの優しさに気が付かず、当たり前のように感じていた。





…馬鹿だ…俺は二人の優しさに甘えていただけのガキだ…どうしようもない己の馬鹿さ加減を再確認して、美月さんとハルさんに、申し訳ない気持ちで一杯になった。



「任せてください、美月さん。頑張ってみますよ!」



美月さんは嬉しそうに微笑むと、急に車の方向を変えた。
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