ホスト 神
由美を振り向かせて言葉に詰まった。



なんでそんなに…泣いてんの?



由美は泣きながら震える手で、首から下がっているネックレスを外して俺に手渡した。





「…神…ありがとう…さよなら。」





ほとんど声にはなっていなかった。





まるで魔法にでもかかったかのように、由美の大きな瞳から悲しみの証が次々にこぼれ落ちる…。




由美は最後に泣いてクシャクシャになった顔で、無理矢理笑顔を作って走っていった。





それは、ハルさんに殴られた衝撃なんてもんじゃなかった。






……俺の体を引き裂いてしまいそうな程の痛みが、胸に鋭い刃のように突き刺さり、俺は只黙って由美を追いかけるチハルの後ろ姿を眺めていた。
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