ホスト 神
リンカーンは辰樹の前で停まり、漆黒のようなウィンドウは音も絶てずに下げり、中から大田原辰雄が顔を出した。



大田原は、カラスが食い散らかした生ゴミを見るような、蔑んだ目で辰樹を見ている。




「…このクズが。」




吐き捨てるように一言だけ辰樹に向かって言葉を発すると、又静かに此方にゆっくりと向かって来る。



刑事と辰樹の後ろ姿は少しずつ、少しずつ小さくなっていった。



父親に投げかけられた言葉がどんなに酷かろうと、それでも俺は辰樹に同情はしない。



他人や他人の大切な物や人を傷付ければ、それはどんな形であろうと、必ず自分に返って来るのだ。



「久しぶりだなハル。あのクズが何を言ったか知らんが、何があっても儂に損害を与えたお前は許さん。[fly]は必ず潰す。瑞希、その中から使える奴だけ連れて本店に戻れ。」



瑞希は漆黒のウィンドウを静かに上げる大田原に頭を下げて、わかりましたとだけ答えた。
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