ホスト 神
チハルに少ない可能性を託して、電話をかけてみる。



「…もしもし?」



出ないと思っていた俺は気が動転した。



「も、もしもしチハル?由美!由美は?」



「…ごめん、神君には言うなって言われてるの…あ、ちょっ、ちょっと待ってね。」



「あ、おい!チハル!今の声由美だろ!」


俺がいくら叫んでみても、それからあっち側の音は何も聞こえなくなった。



でも…今確かに由美の泣いてる声が聞こえた気がする。




「もしもし?ごめんね。ちょっと立て込んでて。」



「…由美はチハルの家にいるんだな?」



「あちゃ…やっぱり由美ちんの声聞こえちゃった?ねぇ神君?神君は由美ちんと一緒に暮らしたいの?」



俺は涙を拭い、はっきりと答えた。



「暮らしたい。」



「…分かった。ウチまでの道教える…そのかわり半端な覚悟じゃ来ないで。」



チハルにマンションの場所だけ聞いて、俺は直ぐに部屋を飛び出した。
< 344 / 444 >

この作品をシェア

pagetop