ホスト 神
そのまま三人で少し笑っていた。



「あぁ!神右手怪我してる。」



由美の一言で、チハルに洗面所で手を洗わせてもらった。


表面に付いているのは辰樹の血だが、右手は気持ち悪いくらいに腫れあがり内出血している。



またやってしまった。



俺の両手には強化プラスチックのネジのような物があり、それで骨を押さえている。



だから俺は人を殴る事が出来ない…この怪我はもう五年前からある。



殴ったりすると、強化プラスチックが砕けたりズレたりして、血管や靭帯、神経を傷付けて内出血と腫れを起こす。



俺と由美はチハルに感謝して、俺が昔から掛かり付けの医者の所へ向かった。



[谷口医院]



街の隅にある古ぼけた汚い医院。看護師など気の利いた人間は見た事がない。



「爺いるか?」



割れたガラスを何度もガムテープで張り直した、煤けたドアを開けて叫んだ。



もちろん、他の患者など居る筈も無い。
< 347 / 444 >

この作品をシェア

pagetop