ホスト 神
「誰じゃ騒がしいのは!ん〜?お前神か?」



奥から不機嫌な顔で、目から随分ズレ落ちた所に眼鏡をかけている、腰の曲がった爺が出てきた。



「おぉ爺いたのか。静かだから死んだかと思ったぞ!またやっちまったんだ。ちょっと見てくれ。」



「昔から口の減らないガキじゃ。さっさと入って奥に来い。大体儂が死んで困るのはお前等みたいな奴かヤクザだろうが。」



爺はそう言って、お世辞にも白いとは言えない白衣を引きずりながら奥に入っていった。



[谷口医院]は、俺のような喧嘩で怪我した若造か、抗争で撃たれたり刺されたりしたヤクザ御用達の医院。医師免許は持っているが、闇医者と変わらない事を専門に請け負っている。



「ん〜砕けてはいないようじゃ。多分血管が傷付いただけじゃろう。取りあえずこの内出血してる血だけ抜くか。」



爺は空の注射器で俺の右手から血を抜き始めた。


痛い。半端じゃ無く痛い。机を見ると、数年前のカルテの上に鏡月の瓶が並んでいる。



「痛いなら最初っからやるなと言っとるじゃろう。いつまで経っても進歩のない奴じゃ。いっその事、警察とウチのポイントカードでも作ったらどうじゃ?」



「大きなお世話だクソ爺。どうせその俺の血も売っちまうくせに。」



爺は皺だらけの顔を、さらに皺を深くして笑った。



「血って売れるんですか?」
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