ホスト 神
心配で今まで黙っていた由美が、俺の後ろから驚きの声を爺に投げかけた。



「なんじゃ?神の嫁か?あのなお嬢さん、この世に売れん物なぞ何一つ無いのじゃよ。現に儂の医師免許だって戸籍だって高く売れたしの〜。」



「コラ爺。健全な一般市民に余計な事教えんな。じゃあ、爺が生きてたらまた来るよ。」



俺は財布から無造作に一万円を掴んで机に置いた。



「ほっほっほ。小生意気な小僧も出世したもんじゃ。もうココに来るような用事を作るなよ神。」



俺は治療してもらった手で振り向かずに手を振り、[谷口医院]を後にした。



タクシーに乗っている間も、マンションに着いてからも、俺と由美は体を引き合わせ離れなかった。



マンションのリビングでハルさんに電話して、二日ばかり休ませてくれと言って電話を電源から切った。


今はこの幸せな時間を誰にも邪魔されたくない。



ハルさんは、今日の夜[fly]を臨時休業にして祝勝会をするから、顔だけでも出せと言ったが、それも断った。





今は…この幸せな時間に、二人で体の芯から、心を満たすまで浸っていたい…。
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