ホスト 神
それから二日間、俺達は片時も離れる時が無いくらいずっと側にいた。



[谷口医院]からマンションに帰って着た俺達は、泣きながらソファで抱きしめ合った後、泣き疲れてそのまま眠ってしまい、起きたのは太陽が沈んだ代わりに出てきた、月が怪しげに輝いている真夜中だった。



いつもは料理なんてしない由美がご飯を作ると言い出したので、右手の使えない俺は料理をしている由美をずっと後ろから抱きしめる。



何と言っても、谷口の爺が適当に包帯を巻いたので、右手は指一本動かす事も出来ない。



そんな俺は左手じゃ箸もスプーンもろくに持てないので、恥ずかしながら由美に一口一口食べさせて貰うしか出来なかった。



でも…それが幸せと感じていた。



久しぶりの安らぐ時間を二人で楽しんだ。



由美の笑顔は真夏の太陽のように眩しく、俺に元気を分け与えてくれる。



だが、そんな楽しい時間はあっと言う間に過ぎ去ってしまう。



俺は由美に駄々をこねながら、渋々仕事に向かった。



…気がかりなのは、時折見せる由美の悲しそうな顔…



まだこの生活に慣れないんだと思い、テキパキと仕事をこなし、アフターもせずにさっさとマンションに戻った。




「由美、ただいま。」
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