ホスト 神
俺は由美の事を追いかけなかった。もちろん全然って訳じゃないけど、由美が笑顔で出て行ったのを、無理矢理引き戻す権利は俺には無い。



俺は由美の事を考えないように、目一杯仕事をした。



同伴もアフターも毎日のようにいれ、ほとんど休みなんて無かった。





マンションにいると、由美の姿を…幻影を追いかけてしまうから。




ソファに座ってる由美。キッチンにいる由美。自分の部屋で眠ってる由美。




手を伸ばして触れてしまえば…消えてしまう幻影。




その由美の幻影は、俺の体に鉛の固まりを入れていき…深い闇の中に落とされてしまうような気がした。



そんな由美の幻影を追いかけ、消えてしまっては悲しみに打ちひしがれて涙を流すという日々は、一ヶ月以上続いた。




…何で俺が好きになる人って、目の前から消えていくんだろう…。




だから俺は、人を…女を好きになるのを止めたんだっけな。




五年前から…。





…陽子と…別れてから。
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