ホスト 神
時刻は八時五十分。俺は気合いを入れ直して、白い大理石で囲まれた、ハイアットホテルのエントランスを潜った。



ロビーの天井には、イタリア製のイルマ・バストーネ社製の巨大なシャンデリアが、広いロビーの隅々まで照らしている。



濃い緑のカーペットの上を歩き、シングルのベットが丸々入りそうなエレベーターに乗り込む。



目指すは三十一階にある、3150号室のスウィートルーム。



赤い木目調を、金縁で囲ったドアをノックする。


…聞こえるのかな?



「あら、神。早かったのね。」



「五分前行動ですよ。これをどうぞ。」



俺は後ろ手に持っていた薔薇を、佐和ママに手渡した。



「まぁ嬉しいわ。この薔薇一輪って所が憎いわね。流石は神、さぁ入って。」



俺は促されるまま、部屋に足を踏み入れた。
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