ホスト 神
新第二章
昨日とは逆に、高い天井のロビーを通り、白い大理石の固まりをくり抜いて作ったんじゃないかというエントランスを潜って、ハイアットホテルを後にする。



昨日と同じく冷たい風が俺の体を通り過ぎるが、朝の太陽の日差しが気持ちよく、俺の体を薄い膜のような物で包み込んでくれるような気がして、気持ちが良い。





思えば、昔から月の光だけを見て過ごしてきた気がする。



真の光である太陽には背を向け、羽虫と同じように偽りの光を求め、羽虫同士で慰め合い、庇い合い、何かに脅えるように肩を寄せ合う。



俺が脅えていたのは、人間の善も悪も照らし出すような、眩しすぎる太陽なのかもしれない。



普通の人間程怪しい者は居ないと思うし、普通の人間なんている筈も無いと思っているが、ニュースキャスターが言っているような、一般的な人間の事を言うのだとしたら、昔の俺はそんな人間達とは真逆の道を選んだ事になる。



だが、それ自体に後悔も反省もしていない。月の光の下でしか味わえない、スリル、楽しさ、愛しさ、喜び、慈しみ、そして悲しみ…。



そのすべてが学ぶべき物であったとも思うし、それだけじゃなく、良い事や悪い事、生きていく術や逃げる術、そして立ち向かう事も月灯りの下で学んだ事だ。
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