ホスト 神

昔から向日葵は好きだった。



あの大きな花で太陽の日差しを正面から受け、茎はどっしりと地中に根を張って、太陽と土の両方から栄養を貰っている姿が羨ましかった。



何より、夏休みという事を再確認させてくれるのも嬉しい。



そんな事を思いながら向日葵を眺めていると、その隣でうずくまりながら仕事をしている女性が居た。



長い綺麗な茶色の髪を右肩から胸に流して、ゆったりと毛先１５センチくらいの所を、飾り気のないゴム一本で束ねている。



俺の存在には、まだ気が付いていないらしい。全部で五人従業員が居たのか…。



やっと俺に気が付いたらしく、恐る恐る後ろを振り返る女性。



「あっ、すみません。いらっしゃいませ。」



俺の足下を見て、後ろに人が居ると気が付いたらしく、勢いよく振り返って俺にお辞儀した。





その女性が顔を上げた瞬間、俺には後ろの向日葵に、新たにもう一本向日葵が生けられたのだろうかと錯覚したんだ…。