ホスト 神
「あれからもう五年半かぁ…なんか神君変わったね。スーツなんかビシッと着こなしちゃってさ。」



頼んでいた花はそのまま[華園]に置いてもらって、俺と陽子は通りを挟んだ古びた喫茶店に入った。



「あの頃はスーツなんて持って無かったからな。」



少し緊張しているのがバレないように、ワザとそっけなく言った。手持ちぶさたになったので、目の前にある熱すぎるブレンドを一口飲んだ。



「熱っ!」



それを見て、陽子は楽しそうに笑っている。



「猫舌は変わってないね。」



陽子も変わってないと言えば変わってない。化粧をしないと近所のコンビニにも行けない性格からメイクは常に完璧。変わった点と言えば、可愛かった顔が綺麗な顔に洗練されたのと、タバコを吸うようになった事…。



「…そんなに私がタバコを吸うようになったのが気になる?神君も接客業をやってるとストレス溜まるでしょ?」



昔は俺にタバコを止めてと言っていた本人が、目の前でアールグレイを飲みながらタバコを吸ってるんだ。誰だって戸惑うさ…。
< 389 / 444 >

この作品をシェア

pagetop