ホスト 神

代表と喜恵と言う言葉が、頭の中を交互に行き来する…。



代表の話しはともかく、喜恵は昨日初めて会ったばかりだってのに。



タクシーの窓を開けて、タバコの煙を冷たい外に吐き出す…気を抜くと、喜恵の顔を思い出している自分を再確認して苦笑い。



マンションを通り過ぎてタクシーを降りた。降りた先は［華園］の少し手前…自分が情けなくなってくる…。



一度［華園］の前を通り過ぎた、根性無しの神。アルコールと照れで上気する顔を両手で二回叩いて、ガラス張りの自動ドアの前に立つ。



ぐるりと店内を一周してみても喜恵の姿は無い。


「あぁ〜喜恵ちゃん？今日は休みですけど…何か注文でもしてたんですか？」



ネームプレートにチーフと書かれている天然パーマのおっさんに、強烈な言葉の右ストレートをくらい、ふらつきながら店を出た。





「神サン、お久しぶりデス。」



その声に気が付き顔を上げると、ゴールドメッキを施した大口径のワイヤーホイールを履かせ、少し車高を落とした現行型のクライスラー、グランド・ボイジャーのリアガラスを開けて、白い歯を惜しげもなく見せて笑っているネルがいた。