ホスト 神
新第三章
俺の腕時計は、午前二時を指している。



目の前には寂れた三階建ての、1フロアに一店舗しか入れない小さなビルが建っている。周りの建物も同じく風化してしまっていて、若い人が来るには少し寂しい場所だ。


一階はテナント募集と言う張り紙が張ってあり、二階は小さなスナック[JUNO]。三階は窓に黒いカーテンが張ってあって、中は電気が点いているのかどうかも分からない。



所々すり切れ、タバコの焦げた跡が無数にある赤いカーペットの上を歩き、体格の良い成人男性なら、三人で窮屈に感じるであろうエレベーターに乗り三階を目指した。



焦げ茶色のドアを静かに開けると、子供の寝息と端の方では泣いている子供をあやしている男性が居た。その男性は俺の姿に気が付くと、近くにいた女性スタッフに泣いてる子供を預け、寝静まっている子供を踏まないように気をつけながら、ゆっくり此方に向かって歩いてくる。



「よぉ神。お前が俺を訪ねて来るなんて珍しいな。」



「ご無沙汰してます連さん。」



目の前には、短髪を明るく染めた男前の男性が立っている。俺達はドアを離れ、エレベーターへと続く狭い通路の真ん中で向き合った。



「ははは。蓮かぁ〜懐かしいな。今は本名の和真だ。」



目の前の男性は蓮さん。俺が[fly]に入った新人の時から、ナンバー3になるまで[fly]のナンバー2を張り続けて引退した先輩ホスト。
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