ホスト 神
「ナナエごめんなぁ。アリサちゃんもごめんね。今日体入の奴だから、まだ分かんなくてさ。」



樹里を早く帰して、不機嫌なナナエのテーブルに専念した。



帰る頃には、ナナエもアリサも機嫌を直してくれたので助かったが、ジュンに透を任せたのが不味かった。



今日のジュンの指名客は、美姫と春奈に真理子に亜希。どれも酒豪揃いで、アフターを予定していたジュンですら倒れ込んでしまう始末…。



夜のミーティングにも顔を出さず、透は従業員専用のトイレで吐き続けている。



ハルさんに透が借りていたスーツのクリーニング代を払い、酔いつぶれて寝ている透をタクシーに乗せてマンションに帰った。



吐瀉物で汚れているスーツを脱がせ、リビングに布団を敷いて透を寝かせる。ソファに座り、酒の所為で小刻みに震えて寝ている透を見ながら、昔の事を思い出していた。



俺とジュンが[fly]に入った時、店にはキャッチ狩りの餌食になった先輩ホストが何人か居た。


先輩と言ってもナンバーの無い、数ヶ月前に入店した奴らだったが、店では先輩に変わりは無い。


小姑のようなネチネチとしたイジメが毎日のように行われた…目つきが悪い、態度が気にくわない、掃除の仕方が悪いなど、何かある度に事務所で腹を殴られた。
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