ホスト 神
「いらなくなったら捨ててもいい。帰って来て、その時にまだ指輪を持ってたら連絡下さい。」



俺はそれだけ言って、喜恵に指輪を渡した。



「ありがとう…一年後に帰ってきたら、必ず連絡します。」



そして喜恵は、涙を流しながら空港に入って行った。





人を好きになる事は、理屈じゃ片づけられない問題なのかもしれない。



好きになったら、相手に好きと伝える。



愛してしまったら、相手に愛してると伝える。



それだけでも足りなくなったら…相手を思いっきり抱きしめる。



人を好きになるって、そういう事なのかもしれない。



…喜恵を見送りながら、俺はそう思った。





それからの俺は、あのマンションを引き払い、もっと家賃の安いマンションに引っ越した。



冬の間中マンションに閉じこもって猛勉強を始め、その年の春には遅咲きの大学生になった。



もちろん二流大学だが、文系を選択して四年後に卒業した。





俺にはやりたい事が見つかっていたのだ。
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