ホスト 神
俺は襖を閉め、ホール主任が向こうへ行ったのを確認した。



「チュ!」



樹里は一瞬ビックリした後に、満足そうな笑みを見せた。



「ほっぺより口の方が良かったのにぃ〜♪」



そう言って子供のように少し拗ねながら俺の前に座った。



[カリブ]の個室は、三畳か四畳くらいの和室で、真ん中にテーブルが置いてあるシンプルな作り。個室だけで二十部屋くらいは有る筈なので、開業時はそんなに豪華に作れなかったのだろう。



俺は心躍りながらメニューを眺めている樹里を見つめた。



「さっきアッシュにキスした時、プクッと膨らんでた樹里のほっぺが可愛いかったからさ!」



樹里は照れ笑いしながら、[カリブ]の一番高いコースを二人前とシャンパンを一本、アッシュに鰯と牛肉のヘルシーハンバーグを注文した。




そして運ばれてくる料理を樹里と食べた。樹里が平目のカルパッチョを一口頬張り、味を確認する。



「此処出たら神君の指輪買いに行こうよっ♪」



樹里は早く[fly]に行くのが嫌なのだ。このまま[fly]に行くと、俺は強制的に出勤になる。そうなると俺の指名客が来た場合、俺は他のテーブルに行かなければいけない…それが樹里は我慢出来ないのだ。
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