ばうんてぃ☆はうんど・vol.1〜地中海より愛を込めて《改訂版》
どこの世界に、フラれた腹いせに殺し屋雇う女がいるってんだ。
いや誤解すんなよ。過去にそういう女の捨て方をした経験があるとか、そういう意味じゃないからな。断じて。
ま、今はそれよりも――
「あかり。マルケスはまだ移動してないか?」
「うい。ちょっと待って」
タブレットを操作する。しばらくペタペタやっていると、
「あれ?」
「どうした?」
「なんか圏外っぽい」
「圏外?」
「ついさっきまで反応あったのに、急におかしくね?」
「まあ確かにな」
電源を切ったのだろうか? しかしこれから取り引きに向かうってときに、電源を切るってのも考えにくい。他に考えられるのは……
『地下に入った?』
3人の声が見事にハモった。
確かにそう考えれば納得できる。しかし一体どこへ?
やつはこれからバルセロナを出ようとしてる可能性が高い。街を出るには、陸路か空路か海路。
まず陸路は、検問に引っかかる可能性が高い。やつが自分の迂闊さを理解していて、サツに居場所を感づかれているかもしれないと考えれば、陸路は避けるはずだ。
次に空路。バルセロナには空港もあるが、空港は網を張られてパクられる率が最も高い場所だ。やはり避けるだろう。
と考えれば、残るは海路。金を払ってどこかの船に紛れこませてもらえれば、パクられる確率は最も低い。海に出てさえしまえば、あとはどうにでもなる。
なるほど。だからやつは港近くにやってきたのか。
密航するなら夜が良い。闇に紛れてしまうのが一番だ。今は夕方。日が沈むまでには、もう少し時間がかかる。どこかで時間を潰すとすれば……
「酒場だな」
俺は一言、ぼそっとつぶやいた。
ディルクはうなずき、
「確かに。早い店なら、時間的にそろそろ開店する時刻だ」
「ああ。恐らくやつは、そこで日が沈むまで時間を潰す気だ」
あかりは肘をついて両手に顎を乗せ、ボーっとこちらの話を聞いている。
いや誤解すんなよ。過去にそういう女の捨て方をした経験があるとか、そういう意味じゃないからな。断じて。
ま、今はそれよりも――
「あかり。マルケスはまだ移動してないか?」
「うい。ちょっと待って」
タブレットを操作する。しばらくペタペタやっていると、
「あれ?」
「どうした?」
「なんか圏外っぽい」
「圏外?」
「ついさっきまで反応あったのに、急におかしくね?」
「まあ確かにな」
電源を切ったのだろうか? しかしこれから取り引きに向かうってときに、電源を切るってのも考えにくい。他に考えられるのは……
『地下に入った?』
3人の声が見事にハモった。
確かにそう考えれば納得できる。しかし一体どこへ?
やつはこれからバルセロナを出ようとしてる可能性が高い。街を出るには、陸路か空路か海路。
まず陸路は、検問に引っかかる可能性が高い。やつが自分の迂闊さを理解していて、サツに居場所を感づかれているかもしれないと考えれば、陸路は避けるはずだ。
次に空路。バルセロナには空港もあるが、空港は網を張られてパクられる率が最も高い場所だ。やはり避けるだろう。
と考えれば、残るは海路。金を払ってどこかの船に紛れこませてもらえれば、パクられる確率は最も低い。海に出てさえしまえば、あとはどうにでもなる。
なるほど。だからやつは港近くにやってきたのか。
密航するなら夜が良い。闇に紛れてしまうのが一番だ。今は夕方。日が沈むまでには、もう少し時間がかかる。どこかで時間を潰すとすれば……
「酒場だな」
俺は一言、ぼそっとつぶやいた。
ディルクはうなずき、
「確かに。早い店なら、時間的にそろそろ開店する時刻だ」
「ああ。恐らくやつは、そこで日が沈むまで時間を潰す気だ」
あかりは肘をついて両手に顎を乗せ、ボーっとこちらの話を聞いている。