ばうんてぃ☆はうんど・vol.1〜地中海より愛を込めて《改訂版》
当のマルケスは、青い顔してブルブル(ふる)えていやがる。
(きも)()わってない野郎(やろう)だ。こんなヘタレのくせに、なんでこんな大それたことをしたんだか。
俺はため息を一つつき、
「俺らもこいつを金に換えないと、明日のメシにも困るんだよ」
「大人しく渡した方が身のためだぞ?」
「んな月並みな……。一応聞くけど、渡さないとどうなるんだ?」
「こうなる」
ボスとやらが手を上げると、男どもは一斉(いっせい)に銃を()いた。
『やっぱり』
言いながら、俺達は横っ飛びにビルの(かげ)(かく)れる。
それと同時だった。弾丸の雨が飛んできたのは。
「数にモノ言わせやがって。くそっ!」
俺とディルクは銃を抜き、ビルの壁際(かべぎわ)から応射(おうしゃ)する。だが人数が違いすぎる上に、向こうはサブマシンガンまで持っていやがる。火力が違いすぎる。
「僕は()ち合いは得意じゃないんだが……」
言いながらも、なんとか応戦(おうせん)するディルク。しかしさすがのディルクも、ライフルなしでこの人数はきつい。
「このままじゃ、あっという間に弾が切れちまう……
おいマルケス! お前、武器(ぶき)くらい持ってねえのか?!」
「も、持ってねえよぉ……!」
路地(ろじ)に転がってたゴミ箱に頭突っ込んで震えてやがる。まったく、使えねえヘタレ野郎だ。
その時、
 
びすっ!
 
どこか別の方角(ほうがく)から、足元に弾を撃ち込まれた。
「あぶねっ!」
とっさに路地の奥へ下がる。と、さらに、
 
びすっ! ばすっ! びすっ!
 
たて(つづ)けに3発、足元だのビルの壁だのに撃ち込まれた。
「なんだ?! どこから撃ってやがる!」
「ジル! あそこだ!」
ディルクの示す先を見れば、ちょうど通りの反対側、路地を見下ろせるビルの屋上から、誰かがライフルでこっちを狙ってやがる。
「ホテルで狙ってやがったスナイパーか!」
「どうやらそのようだ」
「くそっ! ディルク。なんとかあいつ、狙撃(そげき)できねえか?!」
ディルクはぐるりと周囲(しゅうい)見渡(みわた)し、
「あそこの非常階段(ひじょうかいだん)からこのビルの上に(のぼ)れば可能(かのう)だが、グロックでは(とど)かん」
「やっぱ無理(むり)か。ちっ!」
路地の奥に引っ込んだおかげで、スナイパーの死角(しかく)に入り狙撃は()んだが、今度は10人ばかりのチンピラ連中がこちらに迫ってきている。
路地の奥は行き止まりだ。()()はない。
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