ばうんてぃ☆はうんど・vol.1〜地中海より愛を込めて《改訂版》
だいたい悪モンが夜の埠頭に逃げ込んできて、それを追いかけてきたBHが捜しまわるって、ベタ過ぎないか? あかりじゃないが、何か変なトコにムカついてきた。
ところでなぜマルケスはここへやって来たのだろう。ここが取り引き場所だったのか? いや、やつはバルセロナを出るはずだった。それも恐らくは海路、船を使って。
船……?
俺はふと思いついて、あかりに問う。
「あかり。マルケスのスマホ、まだ繋がってるか?」
「えー……? ちょっと待ってえ……」
何だかダルそうな仕草でどこからともなくタブレットを取り出し、スケボーの上に座って操作する。一体どこにしまってあったんだか……
「あれ? また圏外……」
「何?」
ディルクが声をあげる。
「また地下にでも潜ったのかなあ?」
「いや、多分……」
港を出たのだ。もうすでに。陸地から離れたせいで、電波が届かなくなったのだろう。
しかしいつの間に? ずっと見ていたが、さっきから一隻のタンカーも出港してはいなかった。こんなでかい船たちが動けば、気づかないわけがない。
じゃあ何に乗って? そもそもここはタンカー用の埠頭なのだから、タンカー以外の船は――
タンカー用?
俺は並んだ船に視線を走らせる。
そうなのだ。ここはタンカー用の埠頭なのだ。当たり前だが、タンカー以外は停泊していない。ならさっきの――
「漁船だ!」
『は?』
突然叫んだ俺を見て、二人が揃って声を上げる。
「さっき出て行った漁船だ! 漁船がこの埠頭から出て行くわけがねえんだ!」
『ああ!』
二人とも理解したようだ。
おそらくマルケスは、地元の漁師に金を渡して、漁船で密航させてもらう手はずを整えていたんだろう。合流地点にここを選んだのは、他の漁師に顔を見られるのを嫌がったのか、それとも漁師の方が嫌がったのか。
ここなら港湾職員も含め多国籍の大勢の人間が出入りしているし、漁船の一隻くらいフラフラ入ってきても『入る埠頭を間違えたのか』くらいにしか思われない。防波堤よりこっち側は、タンカー用も漁船用も民間のヨットハーバーも全部繋がっているから、万が一見つかったとしてもいくらでも言い逃れできる。
「くそっ! 電波が届かねえってことは、すでにかなり沖まで出てやがるな?! 急いでバラクーダまで戻らねえと……!」
ところでなぜマルケスはここへやって来たのだろう。ここが取り引き場所だったのか? いや、やつはバルセロナを出るはずだった。それも恐らくは海路、船を使って。
船……?
俺はふと思いついて、あかりに問う。
「あかり。マルケスのスマホ、まだ繋がってるか?」
「えー……? ちょっと待ってえ……」
何だかダルそうな仕草でどこからともなくタブレットを取り出し、スケボーの上に座って操作する。一体どこにしまってあったんだか……
「あれ? また圏外……」
「何?」
ディルクが声をあげる。
「また地下にでも潜ったのかなあ?」
「いや、多分……」
港を出たのだ。もうすでに。陸地から離れたせいで、電波が届かなくなったのだろう。
しかしいつの間に? ずっと見ていたが、さっきから一隻のタンカーも出港してはいなかった。こんなでかい船たちが動けば、気づかないわけがない。
じゃあ何に乗って? そもそもここはタンカー用の埠頭なのだから、タンカー以外の船は――
タンカー用?
俺は並んだ船に視線を走らせる。
そうなのだ。ここはタンカー用の埠頭なのだ。当たり前だが、タンカー以外は停泊していない。ならさっきの――
「漁船だ!」
『は?』
突然叫んだ俺を見て、二人が揃って声を上げる。
「さっき出て行った漁船だ! 漁船がこの埠頭から出て行くわけがねえんだ!」
『ああ!』
二人とも理解したようだ。
おそらくマルケスは、地元の漁師に金を渡して、漁船で密航させてもらう手はずを整えていたんだろう。合流地点にここを選んだのは、他の漁師に顔を見られるのを嫌がったのか、それとも漁師の方が嫌がったのか。
ここなら港湾職員も含め多国籍の大勢の人間が出入りしているし、漁船の一隻くらいフラフラ入ってきても『入る埠頭を間違えたのか』くらいにしか思われない。防波堤よりこっち側は、タンカー用も漁船用も民間のヨットハーバーも全部繋がっているから、万が一見つかったとしてもいくらでも言い逃れできる。
「くそっ! 電波が届かねえってことは、すでにかなり沖まで出てやがるな?! 急いでバラクーダまで戻らねえと……!」