ばうんてぃ☆はうんど・vol.1〜地中海より愛を込めて《改訂版》
「何さー! 人がせっかく(はこ)んで来てあげたのに、(れい)の一つもないわけ?! マジムカつく!!」
「そりゃこっちのセリフだ!! 俺の大事なバラクーダを(きず)だらけにしやがって!!」
「急いでんだから、ちょっとくらい仕方ないぢゃん!! イカサマ勝ちで()き上げた船なんだから、別に良いでしょ?!」
「イカサマだろうが何だろうが、大事な俺の船だ!! 勝手(かって)にわけのわからん装置(そうち)付けやがって!!」
「鬼ムカつくー!!! 人の傑作(けっさく)品をわけわからんって、失礼(しつれい)感ちょーマックスぢゃね?! この○■◎#◇!!」
「んなっ……! て、てめっ……! なぜそれを……?!」
情報(じょうほう)はあたしの専門分野(せんもんぶんや)! ついでに言ってやる! ●▲*□◆ヤロー!!」
「き、キッサマー!! ガキの使う言葉じゃねえだろ、それ!! だいたい――」
「おい、急ぐぞ」
不毛(ふもう)な言い(あらそ)いを続ける俺達を尻目(しりめ)に、ディルクは冷静(れいせい)乗船(じょうせん)を始めていた。
 
「ああぁぁぁ……。ひでえ……」
おかしいと思ったのだ。フックにロープで桟橋(さんばし)にもやっておいたはずなのに、勝手に走ってきたから。
フックが見事(みごと)根本(ねもと)から引っぺがされていた。もやったまま、強引(ごういん)発進(はっしん)させたからだ。
俺はもげたフック(があった場所)にすがりつきながら、()(くず)れた。
「男のくせにダサっ。マジドン引き」
「くそったれが! こうなったら、賞金(しょうきん)以外にマルケスからも個人的(こじんてき)修理代(しゅうりだい)ぶん取ってくれるわ!」
「おー! その意気(いき)その意気」
まるで他人事(ひとごと)だ、この女。
まあ良い。それより
「ディルク。例の漁船、まだ見つからねえか?」
操舵(そうだ)しているディルクに声をかける。
「まだだ。レーダーにいくつか反応(はんのう)はあるが、どれがやつの乗った漁船かわからん」
「やっぱ、そう簡単(かんたん)にはいかねえか。
あかり。船の反応をフィルタリングして、なんとか(しぼ)りこめねえか?」
あかりはレーダーのデータをPCに取り込んで、そのデータを解析(かいせき)しながらマルケスの船を捜している。
「レーダーの反応の大きさから絞り込んでるけどー……。漁船サイズの船だけでも何隻(なんせき)もあって、特定(とくてい)するのは無理っぽい」
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