ばうんてぃ☆はうんど・vol.1〜地中海より愛を込めて《改訂版》
なんとか『漁船』だけを抽出(ちゅうしゅつ)することはできたようだが、それ以上は(むずか)しいようだ。
もう全部の船を回ってしらみ(つぶ)しに捜すとか、そんなことしてる時間はない。どうにかして一隻に絞れないだろうか。そう、(たと)えば……
「フィルタリングの条件式(じょうけんしき)を変えてみたらどうだ?」
「大きさ以外で捜すってこと? なら例えば、船の動きとか?」
「動き……そう、動きだ。漁船なのに、(あき)らかに普通の漁船と違う動きをしてる船だけを抽出できないか?」
「そっか! そのくらいならちょーよゆー! ちょっと待って」
早速(さっそく)、新しい条件式を打ち込む。
(ほど)なくして――
「出たよ! 一隻だけ、ここらの漁場(ぎょじょう)から(はなれ)て行く船がいる! 他の漁船とガチで全然違う動き! 距離(きょり)約10マイル!」
「そいつだ! ディルク! 針路(しんろ)をそいつに! 超電導推進(ちょうでんどうすいしん)起動(きどう)!」
了解(りょうかい)
バラクーダは時速(じそく)55ノット以上の超高速(ちょうこうそく)で、一直線に目標(もくひょう)の漁船へと(せま)る。
やがて船影(せんえい)目視(もくし)できる距離までやってきた。漁船の(わり)に、やけに飛ばしてやがる。見るからに怪しい船だ。
双眼鏡(そうがんきょう)(のぞ)いてみると、
「いた! マルケスだ!」
後部デッキにいやがった。相変(あいか)わらずでかい荷物を抱えて、しきりにこっちを気にしている。追われていることに気づいたようだ。
「このまま距離を()めるぞ」
「おうよ!」
バラクーダはさらに漁船に迫る。
「ジル、どうする? 針路をふさいで、強引に止めるか?」
冗談(じょうだん)じゃねえ。万が一ぶつけられたら、またバラクーダが傷ついちまう」
「ぢゃあどうすんのさ?」
「こうすんだよ」
俺はガンナーシートに座り、FCS(火器管制(かきかんせい)システム)を起動する。
「ちょっ! マジ?!」
「大マジだ! M61、1番2番アクティヴ! ターゲット・ロック! セーフティ・デバイス・リリース!」
ガンナーシートのディスプレイに映し出された漁船の映像に、三角形のターゲット・アイコンが重なり、色が赤へと変わる。
「ファイア!!」
別に必要はないが、一声かけてから俺はトリガーを引き絞る。
 
ガ―――――!!!
 
毎分(まいふん)6,000発の発射速度(はっしゃそくど)で、口径(こうけい)20mmの高速徹甲弾(こうそくてっこうだん)を漁船へと(たた)き込む。
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