ばうんてぃ☆はうんど・vol.1〜地中海より愛を込めて《改訂版》
エピローグ
――結局――
マルケスはそのままコーストガードに拘束され、スペイン警察に逮捕された。ちなみに漁船のオーナーもやはりまともな漁師などではなく、密航専門の運び屋だった。当然のことながら、マルケス共々逮捕された。
俺達はというと、面倒ごとはゴメンなので、慌ててその場からトンズラこいた。
マルケスが自分からコーストガードに飛び込んでいったようなものなので、当然賞金はパー。俺達は金と時間をかけて、やつの自首の手助けをしてやったようなもんだ。
などと地中海の日差しを浴びながら、いつもの後部デッキで思いを巡らせていると、
「ジル。メシだぞ」
ディルクが呼びに来た。
「ああ……今行く……」
俺はのっそりと立ち上がる。なんだか全身が重い。心なしか、ディルクも少しやつれたように見える。
キャビンに下りると、あかりはすでにテーブルについていた。両腕の上に顎を乗せ、全力でだらけた体勢だ。そしてテーブルの上には、巨大なピザ『のようなもの』が置かれていた。
「……何だこれ?」
「ピザだ」
ソファに腰掛けながら聞いた俺に、やはり腰掛けながらディルクが答える。
「ピザって……何もトッピングがないように見えるんだが……」
「あるじゃないか。チーズが」
「チーズだけじゃねえか!」
綺麗な黄色い円盤だった。
「もぉ無理ー!! ただの小麦粉とチーズの塊ぢゃんこれ! もっとまともな物が食べたいー!」
ついにあかりが発狂した。
「贅沢言うな。まだ食材が残っていただけラッキーと思え」
「ってことは、おい、まさか……」
嫌な予感がして、俺は尋ねる。
「ああ。これが最後の食料だ」
「のおおおぉぉぉぉぉ!!!」
今度は俺が発狂した。
「今のうちに食っておいた方が良いぞ。次はいつ食事にありつけるかわからん」
身も蓋もないことをクールに言いおった、この男。
あかりは目の幅涙を流しながら、両手に1ピースずつピザ『もどき』をほおばった。
仕方なく俺もピザに手を伸ばす。
「ところで、こんな時に何なんだが」
1ピース目を飲み込んでから、おもむろにディルクが話し出す。
「なんだよ? まだなんかあんのか?」
ピザがしょっぱく感じるのは、きっと塩が効いているからだ。断じて涙のせいなんかじゃないぞ。ぐすっ。男は涙を見せないもんだ。そうだろママ?
マルケスはそのままコーストガードに拘束され、スペイン警察に逮捕された。ちなみに漁船のオーナーもやはりまともな漁師などではなく、密航専門の運び屋だった。当然のことながら、マルケス共々逮捕された。
俺達はというと、面倒ごとはゴメンなので、慌ててその場からトンズラこいた。
マルケスが自分からコーストガードに飛び込んでいったようなものなので、当然賞金はパー。俺達は金と時間をかけて、やつの自首の手助けをしてやったようなもんだ。
などと地中海の日差しを浴びながら、いつもの後部デッキで思いを巡らせていると、
「ジル。メシだぞ」
ディルクが呼びに来た。
「ああ……今行く……」
俺はのっそりと立ち上がる。なんだか全身が重い。心なしか、ディルクも少しやつれたように見える。
キャビンに下りると、あかりはすでにテーブルについていた。両腕の上に顎を乗せ、全力でだらけた体勢だ。そしてテーブルの上には、巨大なピザ『のようなもの』が置かれていた。
「……何だこれ?」
「ピザだ」
ソファに腰掛けながら聞いた俺に、やはり腰掛けながらディルクが答える。
「ピザって……何もトッピングがないように見えるんだが……」
「あるじゃないか。チーズが」
「チーズだけじゃねえか!」
綺麗な黄色い円盤だった。
「もぉ無理ー!! ただの小麦粉とチーズの塊ぢゃんこれ! もっとまともな物が食べたいー!」
ついにあかりが発狂した。
「贅沢言うな。まだ食材が残っていただけラッキーと思え」
「ってことは、おい、まさか……」
嫌な予感がして、俺は尋ねる。
「ああ。これが最後の食料だ」
「のおおおぉぉぉぉぉ!!!」
今度は俺が発狂した。
「今のうちに食っておいた方が良いぞ。次はいつ食事にありつけるかわからん」
身も蓋もないことをクールに言いおった、この男。
あかりは目の幅涙を流しながら、両手に1ピースずつピザ『もどき』をほおばった。
仕方なく俺もピザに手を伸ばす。
「ところで、こんな時に何なんだが」
1ピース目を飲み込んでから、おもむろにディルクが話し出す。
「なんだよ? まだなんかあんのか?」
ピザがしょっぱく感じるのは、きっと塩が効いているからだ。断じて涙のせいなんかじゃないぞ。ぐすっ。男は涙を見せないもんだ。そうだろママ?