カップルのおきて【修正中】
俺はどきっとした。この男性に、何かを悟られた気がしたから。












男性は続けた。











「これは彼の晩年の作品です。死ぬ間際に、彼が私に言ったのです。
『これを君の展覧会で1度だけ公開してくれ。誰かの胸に残れば、私が生きてきた意味が、そのとき見つかるのかもしれない。』と。だから、私はこれをここへ展示することにしました。」












俺は静かに、その言葉を噛み締めていた。
そして、確実に俺の心に残った。彼の『生きてきた意味』は、見つかったのだと、俺はそこにはいない画家に語りかけた。












「幸せとは、人それぞれ。周りに理解されてなくても、その人にとって幸せならば、それでよいのです。この絵画は、彼の幸せの象徴でした。彼の思いが妹に通じていたかは、定かではありませんが、このあと妹は後を追うように病気で亡くなりました。彼の望みは…叶ったのでしょうかね。」












男性は空を見つめ、まるで語りかけるように言った。











俺の心は乱れていた。












『幸せ』がなんなのか…分からなくなった。










罪が…幸せ。でも、それを叶えるためのリスクが、俺にはある。幸せになるために、リスクが伴うのを分かっていながら、行動することなんて……できない。
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