海に花、空に指先、地に霞
「忘れてたの?…祝ってくれる人、いないの?」
「う、…うるさい!どうせ親兄弟もいなけりゃ、友達もあんまりいないわよ!悪かったわね!」
「…その様子じゃ、彼氏もいなさそうだね」
「うるさいな!!ほっといてよ!」
「いや、こっちには好都合」
「帰って!!出てって!!」
「だからさ…」
「帰ってってば!!」
「……聞き分けない子だね」
仕方なさそうに、喚き立てる私の腕を引っ張る。
あっという間に、体ごと、彼の胸元へ引き寄せられた。
「ぎゃ…!」
「もうちょっと色気のある声、出せない?」
「…っ」
顔を寄せられて、
口唇と口唇が触れるか否か
…ギリギリの、ライン。
「沙杏ちゃん……?言うこと聞かせようと思えば…、オレはもっと酷いこともできるよ?」
目の前の瞳が…艶めいて揺れる。
囁くように、甘くやさしい声で……脅された。
「…う~…やだぁ…、怖い……」