海に花、空に指先、地に霞

好きにならなくてもいいとか、
束縛しない、とか。
でも大事にするとか。
…キスとか。

いつもなら、混乱する私の絡まった糸を丁寧に解してくれるけど。

今日の凪世は、突然私を置いてけぼりにする。

「だから…君はもっとオレを利用していい」

ほら。
また…話が変わる。

「な、…なんの話?」

「オレも、なかなかにストレスが溜まるから」

「え?…な、に…?」

「…考えてもみてよ。毎日隣の部屋で、君が寝てて。…部屋に入ると怒るから入れないし」

「あ、当たり前…!」

「…毎晩、何度も唸されて、泣いて目覚めるのを繰り返してるのに、慰めることもできないんだよ?」

「…………!」

「…気がついてないとでも思った?」

確かに。
彼らと暮らすようになってから、…そうやって目覚める癖が…再発した。
相変わらず、継続している。

「…ご、…ごめんなさい。そんな、うるさくしてるとは…思わなくて」

カァッと頬に朱が注す。

「…違う。オレの話、ちゃんと聞いてた?」

「え?」

「……まあいいか…」

凪世が、ふいに目線を水平線に投げた。

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