海に花、空に指先、地に霞
海は一層、赤を強めている。
昼が、終わる。
夜が、来る。
くるり、と首だけでこちらを向く凪世は、…本当に麗々しい。
優しげな口元。
目尻に皺を刻んで。
唐突に口を開く。
私の名を呼んで。
「海、好き?」
「?……好き」
訝るように少し眉を顰めたけど…でも素直に、そう答えた。
凪世が…安堵したように。でも信じていない、というように。
笑う。
「…そう。…嫌いかと、思ってた」
ああ……。
そこでようやく理解した。
凪世が、私をこのデートに誘った意味。
用意してくれた、時間。
決意が邪魔されないような、空間。
「…う……生まれた…ときから、ずっとそばにあるから……。だから……だから」
「…嫌いになれなかった?」
「何でも…知ってるのね」
返事の代わりに。
凪世が微笑んだ。
「……オレに、聞きたいことがあるんだろう?」