海に花、空に指先、地に霞

「か、…返してほしい……!…遺体を…父さんと母さんを………返してよぅ……!」

あなたが、海を統べる王だというなら。
海で死んだ者を束ねるというなら。

いまだに海に沈む父さんと母さんを。


せめて……。
…返して欲しい。

魂までは望まないから。
海に散った命までは、…望まないから。

骨のカケラに意味があるわけじゃない。

でも…骨壷が、あんなにカラカラに空虚だと、淋しすぎるから。

諦めたはずの。
…希望。

こんなに勢いをもって、流れ出すとは思わなかった。


私は返事も聞かずに。
糸が切れたみたいに、砂浜にへたり込んで。
ワンワン泣いた。

…もう我慢できなくて。


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