海に花、空に指先、地に霞
「…冗談だよ。ごめん、やりすぎた」
私がボロボロ泣き出した途端、彼は困ったみたいに、…というか面倒くさそうに苦笑した。
捕まれていた腕も離される。
「…帰ってよぅ…」
「あのね、…さ…」
そのとき、泣きじゃくったままの私の視界に、何か煌くものが見えた。
何か…銀色の…平ぺったい…棒…みたいなのが、ぬぅっと真正面から伸びてくる。
それは、すっと音もなく、ピタリと凪世の首筋に当てられた。
刀?!
ぎょっとして、目を剥く。
凪世は涼しい顔で「おっと」と言っただけだったけれど。
いきなり。
突然。
凪世の背後に、人が立っている。
嘘だ。さっきまでは絶対いなかった…!!