海に花、空に指先、地に霞
「沙杏……」
「答えてくれて…聞いてくれて、…ありがとう」
今度は、もっとちゃんと上手に笑えた。
凪世が、少しだけ…目を瞠った。
それから、ふんわりと……微笑む。
神々しいまでのやさしい甘やかな笑顔だった。
「…約束してあげる。君の御両親の遺体に触れることはできないけど…でも、君が淋しいときは、眠れないときは……オレがそばにいてあげるから」
さらりと髪を撫でられた。
…指先までやさしいから、私はいつものように、照れ隠しの悪態を吐く。
涙を残したままの、顔だったけど。
「…何だか、図々しい気がするんだけど?凪世」
「……かわいくないね、その反応」
「ふふ、嘘。……ありがとう」
そういうと、凪世も苦笑した。
帰ろう、と静かに言われて、
自然と手を取られた。
…人生初のデートは、ずっと、凪世と手を繋いでいた気がする。