海に花、空に指先、地に霞


「沙杏……」

「答えてくれて…聞いてくれて、…ありがとう」

今度は、もっとちゃんと上手に笑えた。

凪世が、少しだけ…目を瞠った。
それから、ふんわりと……微笑む。

神々しいまでのやさしい甘やかな笑顔だった。

「…約束してあげる。君の御両親の遺体に触れることはできないけど…でも、君が淋しいときは、眠れないときは……オレがそばにいてあげるから」

さらりと髪を撫でられた。
…指先までやさしいから、私はいつものように、照れ隠しの悪態を吐く。
涙を残したままの、顔だったけど。

「…何だか、図々しい気がするんだけど?凪世」

「……かわいくないね、その反応」

「ふふ、嘘。……ありがとう」

そういうと、凪世も苦笑した。

帰ろう、と静かに言われて、
自然と手を取られた。


…人生初のデートは、ずっと、凪世と手を繋いでいた気がする。



< 120 / 164 >

この作品をシェア

pagetop