海に花、空に指先、地に霞
暗雲×雷鳴
夜が丁寧に深まっていく。
私はゆったりと、バスタブに身を委ねて目を閉じた。
…初めて男の人と一緒に歩いた街の風景が瞼の裏に甦る。
一緒に歩いたり、お茶したり。…あんな風に手を結んだのも、初めてだったな…。
パシャリ、と湯で顔を叩く。
…思い返すと、何もかも恥ずかしい気がして。
人目も憚らずあんなに泣いたこと。
抵抗しなかったキス。
会話も何度も甦ってくる。
凪世は…。
多分…私のこと、好き…なんかじゃないんだろう。
多分、誰にも本気にならない人なんだろう。
でも、王家の存続が危ういから、どうしても花嫁が欲しいって(でも、この条件は天鳥も森さんも同じはず?)。
幾度、昼間の会話を頭の中でリピートさせても、凪世の真意が掴めない。
…お互いに気持ちがなくてもいいから…結婚したいってことだったのかな…。