海に花、空に指先、地に霞
暗雲×雷鳴



夜が丁寧に深まっていく。

私はゆったりと、バスタブに身を委ねて目を閉じた。

…初めて男の人と一緒に歩いた街の風景が瞼の裏に甦る。
一緒に歩いたり、お茶したり。…あんな風に手を結んだのも、初めてだったな…。

パシャリ、と湯で顔を叩く。

…思い返すと、何もかも恥ずかしい気がして。

人目も憚らずあんなに泣いたこと。
抵抗しなかったキス。

会話も何度も甦ってくる。

凪世は…。
多分…私のこと、好き…なんかじゃないんだろう。

多分、誰にも本気にならない人なんだろう。

でも、王家の存続が危ういから、どうしても花嫁が欲しいって(でも、この条件は天鳥も森さんも同じはず?)。

幾度、昼間の会話を頭の中でリピートさせても、凪世の真意が掴めない。

…お互いに気持ちがなくてもいいから…結婚したいってことだったのかな…。

< 121 / 164 >

この作品をシェア

pagetop