海に花、空に指先、地に霞

けれど、ヒョイと天鳥が首だけで振り返る。

「沙杏、今日のナギとのデート、楽しかった?」

「あ、……え?」

「今度は僕と行こうね。…おやすみ」

パタリ、と。
猫みたいな笑顔を残してドアの向こうに消えた。

…そういえば。
今朝の天鳥は機嫌が悪かったな…。帰ってきてからも、珍しく部屋に篭って顔を見せなかったし。

でも、今は別に普通だ。

浮き沈みが激しい人だな…。

天鳥とのデートは、正直に楽しそうだけど、ブンブン振り回されて、大変そうだ。

ふ、と苦笑する。

私もだんだん、彼らに馴れつつあるな…。

もし…。

もしも、彼らの誰かと結婚した場合、…し、新婚生活ってどうなるんだろう?
王家の暮らし……?

全然イメージが湧かない。

花嫁って、…何かすることとかあるのかな?

霊感とかもないし、全く普通の人間だから、彼らの仕事…は手伝えないし。

何の力もない私に、何が出来るんだろう。

魂を巡らせる、という彼らの…力になれるんだろうか。

いつか、聞いてみよう。


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