海に花、空に指先、地に霞


目を閉じて。
静かに手を合わせる。


……父さん
母さん…

この家にね、
海の王様がいて。

…二人の居場所も知ってるって。

でも…やっぱり…。
連れ帰ってあげることはできないの。


ごめんね


でも。
海を統べるという人は、なかなかやさしい人だよ。

だから…だからね。
心配しなくても、大丈夫。
多分、ゆっくり眠れるよ。

父さんたちは、二人一緒だから、いいでしょ?

淋しくないよね……?




じっと手を合わせて、目を開けたとき。

斜め後ろで、森さんも同じようにきちんと正座をしていた。

ありがとう、と彼に向き直ると、珍しく森さんから口を開いた。

「御父主と御母堂に…何を?」

「ん…?あのね……」

そうして。
今日あったことを、語る。

凪世と一緒に歩いたこと。
凪世が女の人にだらし無いってことがよく分かったこと。

それから、海での…会話。
みっともなく泣いたこと。

話しながら、余韻のような涙がポロリと零れた。
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